2014年9月議会 慰安婦決議討論

 

決議案第15号「いわゆる従軍慰安婦問題に関して、本議会が平成20326日付けで政府に提出した意見書が決定的な根拠を失ったことを確認するとともに、国はさらなる真相の究明を進め、諸外国、関係諸機関に、慰安婦問題についての正しい理解を促す努力をするよう求める決議」について賛成の立場で、決議案第16号「いわゆる従軍慰安婦問題に関して、国はさらなる真相の究明を進め、諸外国、関係諸機関に、慰安婦問題についての正しい理解を促す努力をするよう求める決議」について反対の立場で討論します。

 

吉田証言とは、吉田清治が済州島で朝鮮人女性を軍令により強制連行したと告白証言したことを指します。当時、慰安婦強制連行の日本側唯一の証言者として注目されました。この証言を、朝日新聞が1983年以降、幾度となく記事にしましたが、一方で信憑性に疑問を呈する声が出たため、1992年を最後に記事として取り上げることはありませんでした。

記事として取り上げることはしませんでしたが、虚偽であると認めることもしなかったため、1992年韓国政府による「日帝下軍隊慰安婦実態調査報告書」や1996年の国連のクマラスワミ報告、意見書にもあるアメリカ下院議会による決議の報告書において、それぞれ証拠として採用されてしまいます。

その結果、現在では虚言ともいえる吉田証言ですが、今日、諸外国がもっている「慰安婦」=「日本軍によって強制連行され、性奴隷化された朝鮮人女性」というイメージを作り上げてしまいました。

 

さて、平成20326日付のいわゆる慰安婦意見書ですが、平成20年とは西暦では2008年であり、意見書の冒頭にあるアメリカ下院議会の決議が行われた20077月から8か月のちのタイミングで出されています。さらに、冒頭にアメリカ下院議会の決議を紹介し、「残念なことだ」とコメントした当時の安倍晋三首相を非難しています。

このことから、このアメリカ下院議会の決議を支持する立場であることがわかります。

アメリカ下院議会の決議では、「日本政府による強制的な軍隊売春制度」、「残虐性と規模において前例のない20世紀最大規模の人身売買」「日本軍が強制的に若い女性を『慰安婦』と呼ばれる性の奴隷にした事実を公式に認め謝罪し」などと書かれており、これはまさに虚言ともいえる吉田証言が世界に流布したイメージをそのまま採用したものといえます。

このアメリカ下院の決議に対して、当時の日本政府は静観の姿勢を示したため、アメリカ政府は「この対応に満足するとして」、下院の決議を支持せず、一定の距離を置く姿勢を取っています。

つまり、日本政府もアメリカ政府も支持しない決議を、この宝塚市議会が日本の地方議会の先頭を切って支持することを表明した意見書といえます。

さらに、本年7月、日本政府代表団は国連欧州本部で始まった自由権規約委員会において、慰安婦を性奴隷と表現することを不適切とする見解を表明していますが、これとも見解を異にした意見書といえます。

 

まるで、日本軍兵士全体が、鬼畜のごとく女性に乱暴を働き、それを政府や軍が公認していたかのような「日本軍が女性を性奴隷化した」という表現は、その兵士を父や祖父としてもつ我々国民の、過去、現在、未来にわたって名誉を貶めることであり、この国を守る、いやむしろ、家族を守るために命を落としていった祖先に対しての冒涜ともいえます。

慰安婦=性奴隷という仮定で書かれている、いわゆる慰安婦意見書はその世界的なイメージをつくる原因となった吉田証言が虚偽であったと正式に認められた現時点において、その根拠を失ったとするのが当然だといえます。

 

決議案第15号と決議案第16号との決定的な違いは、根拠を失ったことを確認するか否かにあり、諸外国、関係機関に正しい理解を促す努力を求める点では同じことを求めています。

しかし、いわゆる慰安婦意見書がその根拠を失ったことを確認しないまま、さらなる意見書を提出することになれば、宝塚市議会は「慰安婦=性奴隷」であるという主張を支持したまま諸外国、関係機関に正しい理解を促す努力を求めることになり、ここでいう正しい理解とは「慰安婦は性奴隷である」という認識の上に立っての理解ということになります。

これに対して、決議案第15号は「慰安婦は性奴隷である」との認識を打消したうえで、政府に求めるものといえます。

このことから、決議案第15号と決議案第16号とでは、表現は同じでも、異なる認識の上に立っている以上、双方が求める「正しさ」が全く正反対のものであるといえます。

よって「慰安婦を性奴隷と表現することは不適切」という立場に立って考えると、決議案第15号に賛成し、決議案第16号に反対するのが正しい選択だということをお伝えして、討論を終わります。