Step up Report No.21

財源不足で予算が組めない?

宝塚市の財政は危機的状況です。

財政見通しをもとにシミュレーションを行いました。

このままでは、令和8年度以降の予算編成が困難です。

▽財源不足に対する改善策は不十分

 2024年3月に公表された財政見通しでは、令和6年度から令和15年度の10年間で、総額112億8100万円もの財源不足が見込まれています。この財源不足に対応するため、市は令和7年度に10億円、令和8年度と令和9年度にそれぞれ7億円、合計24億円の収支改善に取り組む方針を示していました。
 しかし、実際に進められた事務事業の見直しによる収支改善額はわずか2.8億円にとどまり、その中でも土地売却など一時的な効果しか見込めない施策を除くと、持続的な収支改善額はわずか1億8100万円にすぎません。この状況から、市長がリーダーシップを発揮して財源不足の解消に本気で取り組んでいるとは言い難く、むしろ課題を先送りしているように見受けられます。そこで、本気で取り組まなければ将来どのような状況になるのかを明確にするため、独自に財政シミュレーションを実施しました。

令和8年度以降の予算編成が困難に

 財政シミュレーションは、2024年3月の財政見通しをベースにしています。なお、病院の建替え費用増加分(年間1.1億円)、新ごみ処理施設の建設費用増加分(年間0.5億円)を下表「③歳出増加想定分」として追加し、最新の状況での試算を行っています。
 シミュレーションの判定は「A財政規律」と「B予算編成可能性」で行っています。財政調整基金残高が標準財政規模の10%(4,772百万円)を割り込んだ場合は、Aが「✕」になります。また、財政調整基金で財源不足を補えず、予算編成ができない場合には、Bが「✕」になります。ここからわかることは、「来年度の予算は財政調整基金で補填すれば編成可能となるものの、令和8年度以降は予算編成が困難になる可能性が高い」ということです。3月議会では令和7年度の骨格予算が審議されますが、令和8年度以降の予算編成が可能となるかも重要なポイントです。

▽さらに25.8億円の収支改善が必要

 財政シミュレーションでは、現状の収支改善額のままでは令和8年度以降の予算編成が困難になることがわかりました。では、どうすればこの状況を回避できるのでしょうか。結論から言うと、財政規律を守り、予算編成を可能にするには、令和8年度、令和9年度にそれぞれ12.9億円、合計25.8億円の収支改善が必要となります。
 しかし、今年度実施された事務事業見直しにおいて、今後検討するとしている見直し事業の効果額を合算しても10億円には到底届かないと言われており、25.8億円の収支改善については、実現の見通しが立っているとは言い難い状況です。

▽予算編成だけなら12.6億円で可

 市は、災害などの緊急時に対応するため、財政調整基金の残高を標準財政規模の10%以上とすることを目標としており、万が一これを下回った場合でも、3年以内に回復させる方針を掲げています。この方針を考慮せず、予算編成の可能性だけに焦点を当てると、令和8年度に12.6億円の収支改善を行うことで編成が可能になります。

▽先送りは、結果的に市民の負担増に

 財政見通しでは、合計24億円の収支改善を目標としていましたが、現時点ではわずか2.8億円の改善しか達成されていません。その結果、今後さらに25.8億円の収支改善が必要となり、目標額の合計は28.6億円に膨らみ、当初の計画から4.6億円も必要な額が増加しています。
 また、同じ2.8億円の収支改善であっても、取り組みを前倒しして令和6年度から反映させていれば、必要な収支改善額は合計で18.4億円に抑えられ、10.2億円もの市民負担を軽減することが可能でした。市長は「市民にできるだけ負担を求めたくない」という方針ですが、決断を先送りした結果、市民の負担増を招いている現実をどれほど認識しているのか、疑問が残ります。

▽3年限定で30億円の収支改善も一案

 宝塚市の財政は緊急事態であり、迅速な収支改善が必要です。多くの事業を停止して20億円規模の改善を図るには、市民の理解が不可欠で時間も要しますが、「3年間限定の事業停止」という案で理解を求めることも考えられます。この場合、財政規律を守り、予算編成を可能にするには30億円、予算編成のみを可能にするには21.6億円の収支改善が必要です。スピード感を持って対策を行うには「期間限定」も一案だと思います。

▽財政非常事態宣言を求める決議を可決

 宝塚市議会は財政状況に強い危機感を抱いています。そこで、12月議会において「財政の主要課題に関する調査特別委員会」を設置し、「宝塚市財政非常事態宣言の発令を求める決議」を全会一致で可決しました。本決議では、市に財政再建に向けた一層の取組みを求めるとともに、持続可能な財政を実現し、市民が明るい未来を描けるよう、この危機に立ち向かうことを表明しています。