2016年6月議会 質疑・討論(LGBT決議)

———————-以下、決議案———————-

平成28年度宝塚市一般会計予算に対する附帯決議にかかる「性的マイノリティに寄り添うまちづくりの取組」についてより丁寧な対応を早急に求める決議(案)

 

本市が進める性的マイノリティに寄り添うまちづくりの取組は、性の多様性を理解し、誰もが「ありのままで」「安心して自分らしく」過ごせる、そんな、誰もが生きやすい社会をめざし、性的マイノリティの方々への理解と支援を行うというものであり、その趣旨は十分に理解するものである。

一方で、性的マイノリティに対する市民の理解は十分に浸透しておらず、市民の思いは様々であり、課題の解決に向けた取り組みを進めるには、市民などの意見を十分に考慮し議論を深めることが重要である。そこで、本市議会は、平成28年3月18日の予算特別委員会において、平成28年度宝塚市一般会計予算を可決するに当たり、全員一致で附帯決議を付し、その執行に当たっては事前に議会への報告を行い、議会との議論を経て決定するよう求めたものである。

今般、市長は宝塚市パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱を制定し、平成28年6月1日から施行することを公表された。

本市と同様に、要綱でパートナー宣誓の制度を取り入れた世田谷区では、6年の歳月をかけて市民講座や職員研修に取り組み、市民や事業を進める職員の啓発に十分な力を注いできた。3000人の区民を対象とした意識調査では、性的マイノリティの方々の人権を守る啓発や施策が必要と答えた回答は70%近くに達し、必要ないと答えた回答は4.3%に止まっていることが、その努力を示しているように思える。

世田谷区は、平成27年7月にパートナーシップ宣誓の取り扱いに関する要綱を公表されたが、その際、宣誓受領証の交付によって全てが解決するわけではないことから、次の段階として、LGBT当事者の参加を求め、今後、何をするべきかを提案していただくと発表された。そのような時間をかけた地道な、かつ計画的な取り組みが、要綱の施行日に7組のカップルが宣誓受領証の交付を受けたことに繋がっていると考えられる。

本市は、本年6月1日から、パートナーシップの宣誓の取扱いに関する要綱を施行するとしているが、本市の取り組みは緒に就いたばかりであり、市民や事業を推進する職員に対する本格的な啓発も行われておらず、市民に対する意識調査も実施されていない。

市民からいただいた意見はごく少数の方が賛成しているにすぎず、市民に理解が十分に浸透しているとは言えない。今後、具体的にどのように進めるかという行動計画も見えず、問題が生じてから考えれば良いかのような姿勢に映らざるを得ない。

議会へは、会派代表者会で報告を行い、その後会派代表に順次説明を行ったに過ぎず、附帯決議に記された「議会との議論」は、到底十分に果たされているとは言えない。

よって、あらためて、事前に、議会との議論を十分に果たすよう求めるものである。

以上、決議する。

 

 

———————-以下、賛成討論———————-

決議案第1号 平成28年度宝塚市一般会計予算に対する附帯決議にかかる「性的マイノリティに寄り添うまちづくりの取組」についてより丁寧な対応を早急に求める決議(案)に対し、賛成の立場で討論を行います。

 

先の予算特別委員会での附帯決議では、本事業の趣旨は理解するものの、性的マイノリティに対する市民の理解が様々であることから、それらを考慮し、議論を深めることが重要であるとの認識の上で、執行にあたって事前に議会への報告と議論を求めました。

当局がこの附帯決議に基づいて、2度の代表者会と個別に各会派を回って説明を行ったことは、否定をするものではありませんが、本事業の趣旨や、事業に対する市民の理解等を勘案すると、このまま事業の執行にあたるのは拙速と言わざるを得ず、結果的に「誰もが生きやすい社会」を目指すにあたって遠回りをすることになってしまうのではと懸念しています。

 

本事業に対し、市に寄せられた意見の内訳を見てみると、賛成意見は13件、反対意見は2547件でした。

反対意見で多いのは、憲法や民法に反するのではという意見や少子化へ繋がるのでは、日本の社会秩序の崩壊に繋がるのではという懸念からのものでした。

それに対し、賛成意見やそもそもの政策の発生源としての考え方としては、性的マイノリティの人たちがもつ悩みや不安を少しでも解消してあげたいというものです。

どちらの意見も一定理解できるもので、行政の施策として行うものである以上、どちらかの意見のみを採用するべきではありません。

そもそもの視点が、一方がマクロ、一方がミクロであるがゆえに議論がかみ合わないと考えるかもしれませんが、例えて言うなら、年金生活者の視点にたてば、それだけでは生活が厳しいというミクロの視点と、高齢化社会において手厚くしてしまえば、財源等の問題からそれ以外の施策にも影響が出るというマクロの視点のバランスをいかに保っていくかというところが年金問題のポイントであるのと同様に、一方の視点に偏るのではなく、いかにそれぞれが許容、容認できる範囲でのバランスを保っていくかが行政の施策としての勘所であるといえます。

そう考えれば、性的マイノリティの方々にとっての「生きやすい社会」というのは、それ以外の人たちの理解が進むことによって初めて実現できるものであり、行政が「それぞれの主張は平行線だから」と言い切ってしまい、反対意見を聞き置くだけで事業を拙速に進めてしまう、もっと言うなれば、丁寧に進めているつもりでも、拙速に進めたと思われてしまうことすらも、理解をすすめることを妨げる恐れがあります。

だからこそ、世田谷区では6年の歳月をかけて啓発に取り組んだ後に、パートナーシップ宣誓の制度を導入したのではないでしょうか。

一方、我が市では反対意見のうち、「市民や議会の意見を聴かないで決めること、市長の独断で決めることに反対」という意見が557件ありました。これは、慎重な議論とその議論の積み重ねの上に様々な施策の執行を求めているもので、言い換えれば、すでに現状の施策の進め方が拙速であるという意見に他なりません。

このような意見が数多くあるということは、施策の推進、特にパートナーシップ制度の導入に際しては、慎重を期す必要があり、事業の執行の前に、議会との議論を行うことは、附帯決議に基づいて行われるということ以上に意味を持つはずです。

市民や議会における双方の意見は、一見すると「平行線」であるように見えるかもしれませんが、これらを少しでも近づけることができる方法は、「しっかりとした議論を行う中で、双方の立場や意見を理解する」ことしか無く、理解には時間がかかるであろうからこそ、時間をかける必要があるとも言えます。私達が目指すものが他者の理解に基づいた「生きやすい社会」であるのであれば、「急がばまわれ」を実践すべきではないでしょうか。

 

ですから、この施策は節目節目でしっかりとした議論を行っていくべきものだと考えます。積み重ねた議論こそが、他者の理解が広がっていく土台となり、長い目で見た場合に有効な施策となりえるはずです。

節目節目で議論を行い、それらを積み重ねていくためには、議会で行われる議論は、公開でかつ、議事録として残る場で行われる必要があります。

そういう意味では、「2度の代表者会」と「個別に各会派を回った説明」というのは物足りないものだといえます。

 

本決議案は、市民の議論や理解が熟成されているとは言えない状況下でのパートナーシップ制度の導入について、節目ともいえる導入前の段階での議論、公開の場で議事録が残る形での議論を求めるものです。

相談窓口設置や職員啓発を行って、市民意識調査を行った上でのパートナーシップ制度の導入に至った世田谷区を参考にしているはずであるのに、それらを同時並行で行おうと考えた理由や、要綱から条例への移行について、今後の計画など、執行前の段階で質疑を行っておく必要もあります。

単なるイデオロギー論争や感情論に終始するのではなく、「生きやすい社会」を少しずつでも実現していくために、しっかりとした議論を節目節目で積み重ね、現実的な施策へとしていくべきだと考えから、本決議案に賛成します。