2014年12月議会 反対討論(平成25年度決算)

 

太誠会の大川裕之です。

議案第105号 平成25年度宝塚市一般会計歳入歳出決算認定について、不認定すべきとの立場で討論を行います。

 

本年10月に出された財政見通しでは、普通会計の一般財源において、今後5年間で10億8600万円、年平均で2億円以上の財源不足となることが明らかになりました。

そんな中、インフラや公共施設の老朽化対応や社会保障関連経費をはじめとする民生費など、今後、大きく伸びるであろう財政需要に対応していかなければなりません。

 

宝塚市公共施設マネジメント基本方針によると、今後40年間に必要な改修費や更新費の合計は4,525.8億円、年平均では約113.2億円となっています。しかしながら、平成25年度を含む過去3年間の更新費用等の平均は、約44.9億円であり、試算額に対して40%程度の費用しかかけていません。

ちなみに、新クリーンセンターの建設が予定されている平成35年度より前、つまりは平成26年度から平成34年度までの9年間の更新等費用の合計は約602億円であり、年平均は66.9億円ですから、更新や改修が本格化する前の最も費用が掛からないであろう期間ですら約22億円も少ない状況です。仮に、少なく見積もって、一般財源が更新等費用の4分の1だとすると、その期間だけでも、年間約5億円の一般財源がさらに必要な状況と言えます。

 

このような状況にありながら、一方で、NTN(株)宝塚製作所跡地やガーデンフィールズ跡地において、新規建設を進めようとしています。これらに中央公民館の建設も含めると、事業費は80億円~100億円にも上ると推定され、少なくとも投入する一般財源は15億円、5年にわたって3億円ずつ必要になると予想されます。これに加え、新システムの開発に30億円程度、10年にわたって3億円ずつの一般財源が必要だと予想されます。

 

つまり、今後10年の財政運営においては、一般財源ベースで、1年間に2億円の財源不足に加え、毎年5億円の更新等費用の不足、3億円~6億円の新規投資が必要な状況であり、これらを合計すると、最低でも10億円の一般財源が不足すると予想されます。

 

このような将来予測に加えて、民生費、特に扶助費の部分で一般財源が今後伸びていく可能性が高いことも指摘しておきます。

 

まずは、障害者医療費助成事業についてですが、この事業では、県の制度に加えて、市独自に、より程度の軽い中度の方まで対象を広げています。この拡大部分が他市よりも大きいのが我が市の特徴でもあります。しかしながら、この5年で、県制度対象者が350名増えたのに対し、市独自制度の対象者は933名と県制度の3倍近く増加しています。高齢化の進展に伴い、より程度の軽い市独自制度の対象者が増えやすい傾向は、今後も続くと予想され、県制度の負担分と合わせて、一般財源を6.8億円投入している現状から、さらに、負担が増えることが予想できます。

 

次に、自立生活支援事業についてですが、国や県の負担がほとんど増加していないのにもかかわらず、一般財源の負担が平成24年度より5.億8900万円も増加しています。

この事業は基本的に、国が2分の1、県と市が4分の1を負担することになっていますので、一般財源だけがこのように大きく伸びることは不自然です。

質疑の中で、このうち2億2600万円は、平成24年度に余計に請求しすぎたため、国や県に対しての返還金であることがわかり、実質的には3.6億円の増加でした。

この3.6憶円の増加ですが、事業費全体は4.1億円増加しており、本来なら国が2.1億円、県と市で1億円ずつ負担が増加するのですが、実際の増加額は国が0.1億円、県が0.4億円と負担を抑制しており、結果的に増加分の1億円に加え、国と県が負担すべき2.6億円の増加分も市が負担し、合計3.6億円の一般財源の増加となったことがわかりました。

このことに対し、国や県に相応の負担を求めていくことは当然としても、市よりも財政的に厳しい国や県が、今後もこのような対応をする可能性は高く、一般財源の負担がより一層増えることを念頭に置いて、できる限りの対策をとる必要があります。

 

さらに、こういう状況下においても、阪神間各市がすでに廃止している福祉金の制度を今も残し、年間3億円を超える一般財源を投入している現状も含めて、今後も伸びていく民生費や扶助費について、利害関係者を除いた第3者機関において検討すべきとの意見を付け加えておきます。

 

さて、インフラや公共施設の老朽化対応や社会保障関連経費をはじめとする民生費など、今後、大きく伸びるであろう財政需要の今後10年間を詳細に検討していくと、一般財源ベースでの財源不足や新たな財政需要が年間10億円もあり、より一層の財政負担が現実のものとして見えてきます。

そんな状況にあるにもかかわらず、人件費の部分で相当な改善の余地を残していることが、この決算に反対する大きな理由の一つです。

 

まず、役職と給料の逆転現象についてです。現在使われている行政職給料表をグラフ化し、月額給料12万5千円から50万円までを2万5千円ずつに区切り、各級ごとに対象人数をいれました。例えば、1級職だと、125,200円から15万円までの層は0人、そこから25,000円ずつ3層あって、それぞれ84人、16人、2人となり、25万円から251,600円までの層が2人の6階層に区切っています。

ここで問題になるのは、3級、4級、5級職で逆転現象が起こっていることです。3級は係長級、4級は副課長、5級は課長級です。

3級の上位2階層ですが、375,000円~400,000円までの層に155人、400,000円~418,900円の層に110人の職員がいます。

これに対し、4級、5級の375,000円~400,000円の層には4級に15人、5級に3人の職員がいます。

つまり、この管理職18人より高い給料をもらっている係長が110人、同等もしくは高い給料をもらっている人が155人いることになります。

この給料表を適用している職員が1,307人いる中での265人ですから、約20%が管理職と同等もしくはそれ以上の給料をもらっており、職員の相当数で役職と給料の逆転現象がおこっていることがわかりました。

この状況を改善するためには、3級職の上位2階層を削除し、上限を375,000円とすることが必要です。この時の年収は約680万円であり、係長級の年収の上限としてはそれほど無理のあるものではなく、これによる効果額は1.4億円となることから、速やかな改善が必要だと考えます。

 

次に、非常勤嘱託職員の年収が他市に比べて高いことです。阪神間の平均と宝塚市のそれとを比べると、24歳の採用時においては宝塚市が10%程度、金額にして20万円から30万円ほど高くなっています。それ以上に問題なのは、他市は定年前の年収が採用時の1.2倍でしかないのに対し、宝塚市では、定年前には採用時の2.2倍の報酬をもらっていることです。その結果、定年前の年収は阪神間平均の2倍となっており、速やかな改善が必要であることは明らかです。

非常勤嘱託職員の総人件費から試算すると、阪神間の平均より30%も高い人件費をかけていることになり、これを阪神間並みに改善すると、約12億円の30%ですから、3.6憶円の効果額になります。

 

さらに、学校給食を民間委託できない理由がなくなったにもかかわらず、それに着手しないことです。宝塚市行財政改革推進委員会の「学校給食を民間委託すべき」との提言に対し、「調理員については、正規職員の退職不補充及び嘱託化を進め、コスト削減を図っている」ことと、効率化の視点で考えるべきでなく、食育教育の観点および災害時の炊き出し拠点になるとの理由から、民間委託の実施が困難であると回答しました。

これが、平成24年2月に出された提言に係る対応方針での回答でした。

平成24年2月に正規職員の退職不補充と言いながら、数か月後には学校給食に関わる技能労務職、つまりは正規職員の募集を行い、平成25年度より採用していることが大きな問題です。この確信犯的な技能労務職の採用は、行財政改革推進委員会を否定する行為であり、このような市政運営は到底容認できません。

さて、正規職員を採用し、嘱託化を進めても、他市に比べて高い報酬を維持したままという状況下で、民間委託は困難というのは戯言以外の何物でもありません。

仮に民間委託すれば、尼崎市の試算結果をもとに考えると30%程度の効果額が出ますので、学校給食に関わる人件費が8億円であることから、少なくとも2億円の経費削減になります。実施困難な理由が戯言であったとわかった今、速やかに民間委託すべきです。

 

これらに加えて、市政運営に対して疑問に思う点があります。

 

まず、退職手当組合負担金についてです。退職手当組合に対し、負担金を支払い、退職者には組合から退職手当が給付されるという仕組みですが、過去の負担と給付を比較すると市全体では1億2500万円ほど給付が上回り、簡単に言えば得をしている状況にあります。しかし、会計別に見てみますと、一般会計では38億2000万円の得、水道は11億1500万円の得、下水道が2億円の得があるのに対し、病院が31億1500万円の損をしています。病院は看護師など定年前に退職する方が多いため、他と同様の負担割合だと、どうしても負担のほうが大きくなる構造的な問題を抱えており、もし仮に、31億円を超える損が解消できれば、現在の資金不足も一気に解消してしまいます。年間でみても、2億円~3億円の損が継続的に続いており、この解消が病院経営の改善につながることは間違いありません。この状況を放置し、結果的に病院経営を圧迫してきた市政運営を容認することはできません。

 

その他、確たる基準のないまま評価をしている指定管理のモニタリングや、いまだ、国や民間より高額の給料を支払わなければならない技能労務職の採用を続けている点も容認できません。

 

さて、ここまで、財源不足と新たな財政需要が一般財源ベースで年10億円あること、民生費や扶助費の一般財源負担分が増大する可能性について指摘し、役職と給料の逆転現象の解消で1.4億円、非常勤嘱託職員の報酬を阪神間並みにすることで3.6億円、学校給食の民間委託で2億円、これに給付金の3億円を加えて合計10億円の一般財源を捻出できることを明らかにしました。

 

市長は平成25年度の施政方針の中で、「職員の給与などを聖域とせず、社会情勢に対応したものになるよう、第3者機関を設置し、意見をいただくなど、行財政改革の手を緩めず実行します」と述べられました。

そして、そのための手段として、市職員の給与のあり方に関する懇話会を開催されました。にもかかわらず、人件費において、役職と給料の逆転現象や他市より異常に高い非常勤嘱託職員の報酬など、ごく当たり前の改善が未だ実行されず放置されています。

これは「職員の給与を聖域とし、社会情勢に対応させるつもりはない」としか見えず、行財政改革推進委員会から提言のあった学校給食で退職不補充といいながら採用を続けていることを見ても、聖域ありきの行財政改革であると言わざるを得ません。

このことから、行財政改革推進派の我々としては、本決算を不認定とすることが、至極当然の行為であると訴えて、討論を終わります。