2014年3月議会 反対討論(平成26年度一般会計予算)

議案第1号 平成26年度宝塚市一般会計予算に対して反対討論を行います。

 

新年度予算では、税制改正による個人市民税の増と景気の回復を見込んで、市税が5億8千万円余増額となっています。

近年、減少傾向にあった税収が増加すること自体は喜ばしいことでしょうが、社会保障関連経費の急増や老朽化する公共施設の整備保全など、財政需要を押し上げるであろう要因は消えてなくなったわけではなく、今後も引き続き厳しい財政運営を迫られることは自明であります。

今回、財政調整基金を取り崩すことなしに予算を編成されましたが、周年事業や跡地購入などに予算を回して、市民生活にとって優先順位の高い事業の執行を遅らせているとすれば、これは本末転倒と言えます。

そういった意味では、財政が厳しいと言いながら、ガーデンフィールズやNTNの跡地を買うという行為を疑問視する市民が多くいるのも不思議ではありません。

確かに、街の魅力が落ちているといわれている現状で、トリプル周年をきっかけに魅力向上を目的とする様々な事業に取り組もうとする姿勢は評価したいと思いますが、換算すれば、市民一人当たりの負担が2万円弱にもなる両跡地を、単に未来へのツケとしてしまうことだけは、何としても避けねばなりません。

そのためには、単に予算を計上しただけで、あとは、これまでのやり方を踏襲していきますといった、いわゆる「公務員的発想」からの脱却が必要です。

しかし、それを理解し、行動しようとしている職員は、ほんの一部であり、市長をトップとする組織としては、その気概も能力も欠けているといわざるを得ません。

 

まず、跡地購入以降も、公共施設の整備や管理費にも税金を投入していこうという発想は捨てねばなりません。公としての役割は地権者となることと、モニタリングを行うことで十分に果たすことが可能であり、一から十まで事業者となる必要はありません。

代表質問や予算委員会の質疑を通じて、ある程度理解はしていただいているようですが、再度、指摘しておきます。

 

今回、宝塚ガーデンフィールズ跡地の基本設計が計上されていますが、通常であればガーデンフィールズ跡地内の施設整備のための基本設計、つまりは設計図を成果品とする事業となるはずです。

そして、この設計図を受け継いだ別の事業者が、詳細な設計図を作成し、その設計図を基にまた違う事業者が建設を行います。そして運営はまた違う事業者が行います。

考えてみれば、上から順に送られてきた指示書に従って忠実に仕事をすればいいのであれば、指示書の文言以上のことまで、考えを巡らすことなどしないのが通常です。

であれば、この仕事から新たな価値が生み出される可能性は限りなく低く、ここから新たな文化を創造し、発信していくなど到底できるとは思えません。

目指すべきは、市民は良好なサービスを享受でき、事業者は事業を通じて社会的貢献を果たし、行政はそこから生まれる価値や文化をまちの付加価値とすることが出来るようなWIN-WINの関係を築くための仕組みを作ることで、そのための調査検討を次の一手とすることが本来の姿であります。

一部の方には、ある程度理解はしていただいているかもしれませんが、明確に組織の方針として採用されていない以上、この予算に賛同することはできません。

 

次に、職員のスキル向上や組織としてのノウハウ蓄積を考えない、つまりはマネジメントの不足について指摘します。

施政方針では、新たな価値や魅力、文化を創造し、発信していこうろとする姿勢が随所に見られます。先ほども述べましたように、この姿勢に関しては評価をしておりますが、これが単なるスローガンになってしまうことを懸念しています。

パソコンの前に座って、黙々と書類を作成している仕事から、どうやったら新たな価値や魅力が生み出されるのでしょうか?そもそも仕事の仕方や組織の在り方から見直すべきですが、もちろん、そんなことは考えもしていないことでしょう。

さて、ファシリティマネジメントやシティプロモーションなど、これまで民間で行われてきた手法を行政に応用しようとする流れの中で、本市もこれにようやく取り組むことを決めました。

これらは、導入すれば即刻効果が出るものではなく、継続的に取り組むことで効果を生み出すものであることは、理解できるかと思います。

継続的に取り組むということは、委託という形で発注する仕事は、しょせん全体の一部分の仕事でしかないわけで、それら一部分をコーディネートする、あるいはプロデュースする主体である市役所にスキルやノウハウを蓄積していくよう、市長はマネジメントしていくべきです。

スキルの向上やノウハウの蓄積は、ファシリティマネジメントやマーケティングの基本的な考えを押さえた上で、実践の中で応用し、検証することで培っていくものだとすると、まずは、入り口となるファシリティマネジメントやマーケティングの考え方を身につけるプログラムが必要ですが、研修事業にこれらは用意されていないようです。

研修以外にも、民間人材の登用や人事交流など、事業の継続性を考えれば、様々な手法を用いることが考えられます。本来こうしたこと先回りして指摘し、アドバイスしてくれる政策アドバイザーを選定すべきですが、全く違う分野の人材を選んでいるところにトップのマネジメント能力不足が顕著に表れています。

「彼を知り、己を知れば百戦危うからず」とは孫子の言葉ですが、ファシリティマネジメントやマーケティングを理解しないままで委託し、事業の継続性を担保するためのスキルの向上やノウハウの蓄積に目を向けない姿勢は、「彼を知らず、己を知らざれば、戦うごとに必ず敗れる」と孫子に代わって、私が指摘しておきます。

 

さらに、財政難の中、新たな固定資産を購入することに疑問を抱く市民の理解を得るためにも、一層の行財政改革を進めるべきですが、進めるどころか逆行さえしていることも指摘しておきます。

本来、行政財政改革とは、サービスの質を落とすことなく、経費を削減したり、費用をかけることなくサービスの質を向上させることを言います。

これは現役世代にとっても、次世代にとっても損はなく、損する世代をつくらないという意味でWIN-WINとなるものです。

しかしながら、技能労務職の3年連続採用はこれとは全くかけ離れたもので、これを容認することはできません。

そもそも、本市の技能労務職の給料は、国の1.2~1.3倍と言われています。これは技能労務職の給与表が一般職のそれと同じものだからで、近隣では尼崎市などがこれを改善しています。

この給与表を改善することなく、採用をする、今回は20代を5名採用したということですが、本来支払うべき金額の1.2~1.3倍の給料で採用するということは、現時点の現役世代は2~3割余計に負担していることになります。さらに20代を採用したということは、この厚遇が改善されるまでこの状態が続き、仮に国に準じた形で給与表が整備されたとしても、激変緩和措置などで、さらに数年は余分な負担を強いられることになります。

このことから現役世代にとっても次世代にも、必要以上に負担を強いる、損をさせるという施策になります。これはWIN-WINなどとは程遠く、一体だれが得をする施策であるのかを市長自身が市民に説明する必要があると考えます。

 

さて、最後になりましたが、施政方針の市政運営の基本方針について一言述べておきます。

基本方針の中には「新たな宝塚文化の創造」や「新しい文化の創造」とありますが、そもそも文化というものは、その成立過程はさておき、一朝一夕に成立するものではありません。ですから、単年度という視点で、予算がついているか否か、その金額が多いか少ないかで、その事業の良しあしや成否を判断するものではありません。

事業の目的が明確であるか、そこに至るまでのストーリー、つまりは戦略が骨太であるかどうか、その事業を推進していくマネジメント体制は強固であるかどうかで判断するべきものです。

そういった意味では、今回の予算案は積み上げられた予算ではあるものの、全体を見渡す視点が欠けており、いわば「画竜点睛を欠く」予算になっているといわざるを得ません。

私たちがやるべきことは、詳細な計画をつくることやうまい文章をつくることではなく、一つ一つの事業を高いレベルで実現していくことであり、それによって市民の福祉を向上することです。

その目的を達成するために、工夫をやめず、思考することをやめない職員、組織であることが、市民の皆さんから集めた税金を有益なものへと変えることができる唯一の手段であること、予算の編成はスタートでしかないことを指摘して、反対討論を終わります。